保険選びは必ず失敗する!行動経済学から見える理由と対策

必ず失敗するアイキャッチ
 

保険選びは高価な買い物です。是が非でも失敗したくありませんよね。

ただ、残念なことに保険選びはほとんどの人が失敗します。

失敗したくないと思えば思うほど失敗します。

行動経済学や心理学を交えながら見ていると失敗する理由でいっぱいです。

今回の記事は失敗する理由と対策について説明しています。

この記事では下記の内容を解説します。

この記事の内容
  • 保険選びに必ず失敗する理由
  • 保険選びに失敗しないための対策

 

 

保険選びに必ず失敗する理由

保険選びは必ず失敗すると言われてビックリしている人も多いのではないでしょうか?

しかも失敗したくないと一生懸命考える方が失敗するなんて。

心理学でみると人間は探すのが難しそうだと、早めに「あきらめる」ようプログラムされているそうです。

生活している中で身近に存在して、保険くらい複雑で分かりにくいものって他にあるでしょうか?

私はちょっと思いつきません。

「あきらめる」プログラム。

経済的な合理性よりも感情を優先させることに原因があるようです。

錯覚

 
まずはこのイラストを見てください。

“A”と“B”のタイルでは、どちらのタイルの方が色が濃いでしょうか?

答えは、本文中段付近にあります。

このイラストも今回の記事で重要なアイテムになります。

 

感情を優先して非合理的に選んでしまう

人間は様々な判断基準をもとに意思決定をくだします。

日頃は冷静な判断をすることができている人がほとんどです。

しかし、ことお金のことになるとその判断は合理性に欠くことが多いようです。

 

 
まずはじめに探すのが難しくて「あきらめる」とはどういう状態なのか考えてみましょう。

 

認知的不調和

人間は理解できない多くの複雑な情報に触れると思考が停止してしまいます。

行動経済学でいうところの“認知的不調和”が起こった結果だと思われます。

認知的不調和とは、矛盾することが起こってモヤモヤした気持ちでストレスを感じる状態です。

保険は“考えなきゃいけないこと”だけど“かったるい”。そんな矛盾する感情が「頭」や「心」の中でグルグルしている状態。そんなストレスのかかった環境を長時間続けられるほど人間は強くありません。

失敗したくないと一生懸命考える程そのギャップが大きくなるのは想像に難くありません。

解決方法として人間の心理の悪いところがでます。

本質とは関係ない都合の良いことを思いこむ。

その傾向が強くなります。
では、保険で考えてみるとどういうことなのでしょうか?

 

    本質とは関係ない判断基準

保険の相談でこんな質問を受けたことがあります。

「みなさんどれを選んでいますか?」
「どれが一番人気がありますか?」

この「赤信号みんなで渡れば怖くない」の心境。「とりあえず多くの人と同じことをやっていれば安心」を行動経済学では“同調伝達”と言います。

保険は非常に複雑で分かりにくい存在です。

多くの人にとっては、どの情報を基に判断すればいいのか、まずその判断がつかない存在です。

そうすると、“多くの人に選ばれている”が情報としての優位性を増し、判断基準となってしまうのです。

 
保険はそれぞれの家庭の状況によって合う合わないがあります。十人十色です。

人気のある商品だからと言って全ての人にベストな商品ということはありません。

 
認知的不調和でかかったストレスから逃げたいという感情が
合理性より勝って判断基準が本質とはズレた結果です。

 
担当者で加入する商品を決めるのもまた、本質とは関係ない判断基準です。

担当者の人間性と商品はまったく関係ありません。

 

 
次に人はお金の価値を感情で高くも見積もるし、低くも見積もるという事を理解しなくてはなりません。

 

心の会計(メンタルアカウンティング)

目の前に存在するお金の額も価値も同じなのに、手に入れた方法や使う状況によって、心理的にお金に「色」を付けてしまうことを経済行動学では「心の会計(メンタルアカウンティング)」といいます。

人間は心の中で無意識にお金を通常会計と特別会計に分けてしまっています。

 

    収入で考えてみよう

例えば収入を考えた場合、“月々の給与”と“年末調整で戻ってきたお金”ではどちらが使いやすいですか?

私は圧倒的に年末調整で戻ってきたお金の方が使いやすいです。

 
どちらも同じお金です。そこになんの差もありません。

なのに年末調整で戻ってきたお金の方が使いやすい。

なぜ?

決まった日に貰える月々の給料とは違う形で手に入ったお金を特別なものだという感情が動いた結果だと思います。

 

 

    支出で考えてみよう

支出でみてみると、日常生活での出費には非常にシビアなのに旅行などでは財布が緩む。そんな事ってありませんか?

卵が1パックがいつもより30円安いなど日々の価格の変化には非常に敏感になるのに、旅先では200円する飲み物を買うのに抵抗があまりない。

新車を購入するときに数万円するオプションをポンとつけてしまう。

せっかくの旅先だし、せっかく新車を買うんだしと、同じお金のはずなのに使うことへの抵抗感は状況によって変わってきます。

 

 
人間は心の中で無意識にお金を通常会計と特別会計に分けてしまっています。

通常会計は日々の生活に使う収入と支出。
使う事に慎重になり、抵抗感が強い傾向がある。

特別会計はごく稀にある収入と支出。
財布の紐は緩くなりがち、抵抗感が弱い傾向がある。
稀と言いながら「自分へのご褒美」という特別会計の枠が大きい人も多い。
そんな人はお金が貯まりにくい。

 

    医療保険で考えてみよう

医療保険への加入に対する優先順位は高くありません。

まぁ、正直言うと医療保険は公的保険で十分と考えていて、生命保険会社の医療保険には入る必要はないと思っています。

高額医療費制度を使えば1月の治療費については限定されますし、老後の備えとしての魅力も感じません。

民間医療保険の必要性は低い 知らないと損する公的医療保険
生命保険と公的医療保険を学ぶ【保険の勉強をしよう③時限目】

医療保険は保険料の総額でみれば100万円前後、商品によっては200万円近い大きな買い物です。

入院保障の給付金支払い実績は毎年1件あたり11万円程度、手術を伴う場合でも23万円くらいになっています。普段から準備できない金額だとは言えません。
もちろん、1回の入院では済まない人もいるでしょうが、平均値からすると数万円程度の給付にとどまるケースも多いと推察されます。

引用元:生命保険の嘘「安心料」はまやかしだ p042 後藤亨 大江英樹 著 小学館 2014年

 
上記にもあるように支払い実績をみてみても合理性に欠けます。

こういう話をしても「いや、医療保険ぐらいは」という人もいます。

病気やケガで入院したときに「貯蓄を取り崩す」ことと「保険会社に払ってもらう」を感情で比べてしまい、「貯蓄を取り崩す」痛みを避けるため、そんな判断になるのだと思います。

、、、、どちらも出所は自分のお金なんですけどね。

 

 

価値は相対的に決まることを忘れる

お金に限らず人間はモノの価値を相対的に判断しています。

対象となる存在がどんな状況にあるかそれが判断の基準になります。

前述した医療保険も「貯蓄を取り崩す」と「保険会社に払ってもらう」を単純にそのことだけを比較すれば、「保険会社に払ってもらう」が圧倒的に価値があるように感じます。

しかし、本当はどちらも出所は同じお金です。

錯覚

 
さて記事の冒頭に登場したこのイラスト。覚えていますか?

“A”と“B”のタイルでは、どちらのタイルの方が色が濃いでしょうか?

答えは、

 
どちらも同じ濃さです。同じ色です。

 
“A”の方が濃ゆく見えていると思いますが、間違いなく両方とも同じ濃さです。

すぐ近くにあるものと比べて判断してしまう人間の特性を利用した目の錯覚です。

比較するものを間違ってしまうと、本当の価値を見失ってしまいます。

 

 

内容は覚えられないが複雑なものを好む

人間は実際の内容よりもそのイメージや感情を優先して判断する傾向があります。

「なんか凄かった!」と、昨日見た映画の感想を言っている人に

「具体的にどこが凄かったの?」と聞いても上手く説明できる人は少ないですし、

質問した人も細かいことは覚えていません。

残るのは「なんか凄かった!」というイメージです。

映画を見に行く理由としては十分かもしれませんが保険選びでは注意が必要です。

 

権威付け効果

専門用語がズラーっと並んでいたり、細かなデータが表示されていたり、「なんか凄そう!」と思わせる効果です。

保険はどんな時にいくらの保障があるかしっかり理解できるシンプルなものが良いはずです。

管理もしやすく、わかりやすいに越したことはありません。

しかし、特約(オプション)が多く付けられたり、こんな時にもあんな時にもと複雑な商品に加入している人が多く居ます。

複雑な商品の方が権威付け効果が効いて、「なんか凄そう!」となる人が多いという事なんでしょうね。

 

そのくせにすぐ忘れる

複雑なものを好むのに、すぐ忘れる。

これも人間であれば仕様がないことです。

とあるパスワードを設定しても、たった1週間で30%の人は忘れてしまい、3カ月もたてば、65%の人が忘れてしまうそうです。

 
また、1970年代、著名な心理学者のハリー・バーリックがこんな研究を行いました。

卒業から50年近く経って行われた同窓会に参加した数百人を対象に卒業アルバムを見返して顔を覚えているか確かめてみたところ、73%の同級生の顔を見分けられたが、名前は18%しか思い出せなかった。

人間はイメージを記憶することは得意だが、細かいディティールまで覚えるのは苦手なようです。

 
保険の提案を受けている時は、いろいろな説明を聞いて細かな数字で根拠を示され「なんか凄そう!」と思い契約したものの、内容に関してはよく覚えていない。

「なんか凄そう!」のイメージも時間が経てば経つほど薄まっていきます。

そうなるとどんな風に思うでしょう?

「あれ?なんでこの保険に入っているんだっけ?」

「この保険に入ったのは失敗だったんじゃないか?」

 

 

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保険選びに失敗しないための対策

人間はなにかを判断する時に情報が多すぎたり、複雑だったりすると合理的に考えるよりも感情を優先させる傾向があります。

お金に関することとなるとその傾向はさらに強くなるようです。

多くの人が保険選びに失敗する原因です。

保険選びに失敗しない為にはどうすればいいのか?

その為の3原則はこれです。

 

失敗しない保険選びの3原則

  1. シンプル
  2. 期間の限定
  3. 低コスト

 

①シンプル

保険の保障内容を複雑なものにしてはいけません。保険はシンプルに限ります。

あれもこれも保険に入って備えようとしても、覚えられません。

内容を覚えていないという事は、言い換えればよく分からないものに毎月お金を払い続けているということです。

そんなナンセンスなことはありません。

 
本当に必要な保障は限られます。

30代の世帯主の男性でも死亡保険とがん保険に加入していれば十分と思っています。

死んだら○○万円、がんになったら○○万円。

これくらいであれば覚えられますし、保障としても十分です。

 

②期間の限定

保険で備える期間を決めて、限定的にするべきです。

期間を限定的にすることで、保険料は安く抑えることができます。
また、その期間が短ければ短い程、保障内容をシンプルにすることができます。

例えば、子どもが独立するまでと考えると、だいぶシンプルに考えることができます。

医療保険やがん保険も最近では一生涯を保障する終身タイプの販売がほとんでですが、必要な時期が過ぎてしまえば解約してしまう方法もあります。

そもそも保険で備えることには限界があります。
一生涯の保障というのも実は魅力は薄いと感じています。

それならばいっそ、始めから期間を限定的なものだと考えた方が、シンプルに考えることができ保険料も抑えられる結果となります。

 

③低コスト

同じ保障であればとにかく安い方を選ぶべきです。

お金の価値に感情で「色」をつけても意味はありません。
死亡保障1,000万円はどの生命保険会社で加入しても1,000万円です。

「大手の方が潰れる心配がないから多少高くても、、、、」

それは冒頭にでてきた、難しいと都合の良いことを思いこむという心理です。

そもそも大手だから潰れない根拠はないですよね?そういうイメージからくる感情です。

また、例え生命保険会社が潰れてしまっても、そこまで心配する必要はありません。
生命保険会社が、万が一潰れてしまっても助けてくれる組織があります。

生命保険会社の規模を判断基準とするのは合理的ではありません。

同じ保障であれば、より安い保険商品を選ぶべきです。

 

 

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まとめ

保険はついつい感情を優先して判断してしまいます。

それが保険選びに失敗する原因です。

そうならないように合理的に考えましょう。

 

 

参考文献
生命保険の嘘「安心料」はまやかしだ 後藤亨 大江英樹 著 小学館 2014年

「失敗の心理」を科学する しまった! ジョゼフ・T・ハリナン 著 栗原百代 訳 講談社 2010年

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

ほけん道場講師。記事の他に、このブログに使われている、マンガやイラストを描いています。元国内生命保険会社のファイナンシャルプランナーです。平たく言えば元保険営業です。恐縮ながら、このブログで先生として登場させていただいています。ファイナンシャル・プランナーとして東京で活動していました。現在は地元である地方に移り住み、サイトの運営などをしております。元保険営業だからこそ分かる、保険のあんなことやこんなことを、お伝えできればと思っています。